バックオフィスのDX化で経営効率を上げるシステムリサーチ

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バックオフィスのDX化で経営効率を上げるシステムリサーチ

きっかけは経産省の「DXレポート」

バックオフィスは会社のすべての業務が関連しているために、DX推進の目玉となっているが、一方で属人化やアナログ業務の残存といった特有の課題を抱え、一筋縄ではいかない。

そのような中でバックオフィスの改革にいち早く取り組んだのが、受託システムの設計、導入、管理などを手掛けるシステムリサーチだ。

同社は競争力強化とその基盤を構築するためバックオフィスのDX化をはじめとした業務全体の見直しを行い、2023年6月に経済産業省が定める『DX認定事業者』にも選ばれている。

ではシステムリサーチのDX戦略とはいったいどのようなものだったのか、バックオフィースのDX化を中心に見ていくことにしよう。

経済産業省は2018年9月7日、「DXレポート」(~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~)を発表、日本企業の中でDXが実現できなければ、2025年以降、最大12兆円/年(2018年時点での3倍)の経済損失が生じる可能性があることを指摘。これを「2025年の崖」と呼んでいる。

「このレポートにはIT人材の不足が2025年までに約43万人まで拡大すると書かかれていました。私たちの仕事はお客様のDX支援ですから、これを読んで、私たちのビジネスにとって大きな商機になると感じた一方で、一抹の不安も感じました」(太田氏)

システムリサーチの経営企画部広報室執行役員で社内DX担当責任者の太田吉信氏はこう語る。

システムリサーチは企業のシステム構築などを行っているIT企業だが、社内のやりとは紙中心に行われており、デジタル化が必ずしも進んでいるとは言えなかった。

「本社の間接部門といいますかコスト部門の効率化がなかなか進んでいませんでした。これをなんとか効率化したいと考えていたのです」(太田氏)

そのような中で2019年7月に社長に就任した平山宏氏は、2021年3月に創業40年の節目を迎えるのを機に、10年を見据えた取り組みを検討するよう指示。

これを受け、事業部長や部門長が集まり、『何をすべきか』『何が必要か』数か月かけて議論が行われ、中長期目標『Subsequent Vison fiftieth(NV)』が策定された。

NVでは①「コア事業の拡大と高度化」②「Next事業への挑戦」③「新たな価値を創出する技術力」④「人的資本とバックオフィスの強化」⑤「従業員のエンゲージメントの深化」の5つの取り組みが掲げられ、10年後の長期目標は、売上高1000億円、利益20%、社員数3000人を目指す。

NVがスタートしたのは2020年4月。5つの取り組みごとにチームが結成され、各チームは管理部門、直接部門の事業部長、ゼネラルマネージャー、シニアマネージャー、マネージャーの管理職で構成されている。

ちなみに管理部門からは経理部、経営企画部、広報部室、内部監査室が参加し、直接部門からは製造システム事業部、産業システム事業部、自動車システム事業部、東京第1システム事業部、東京第2システム事業部、関西システム事業部が参加している。

しかし組織だって作られたものではなく自然発生的に生まれたもので、関係者は事業部の仕事と掛け持ちで参加していた。

「社内的に何か定義された組織ではありません。次の10年を見据えて『こういう課題がある』と問題意識をもった皆さんが現業を抱えながら手弁当でさまざまな活動してきたチームです。意思決定はボトムアップで行われ、各チーム15人程度、総勢は65人ぐらいです」(太田氏)

ボトムアップで意思決定が進められてきたのは、現場のリアルな声や課題が反映できる、あるいは、協力会社など取引先の状況に合わせて柔軟に対応できると考え方からだ。

「結果的には部門間調整がネックとなり、調整に時間がかかることもありましたが、NVの取り組みは全社の取り組みであるため、部門の立場や利益はいったん度外視した上で進めるという強い覚悟を持って推進しています」(太田氏)

定例会は月に1、2回行われ、必要に応じてワーキンググループが結成される。

「定例会では、期初にその一年間の間にやるべきことを決め、月の会合では、その進捗状況の報告をしたり、課題と課題の間に共通するものなどを検証したりして、解決策を検討します」(太田氏)

各NVプロジェクトチームは、各チームが検討したものを社長に報告し、社長から指示が下りてくると、PDCAサイクル(Plan(計画)→ Do(実行)→ Test(確認)→ Act(改善)の4段階を繰り返して業務を継続的に改善する方法)で品質管理や業務改善を進めた。

バックオフィスの課題はペーパーレス化

ここで、システムリサーチのDX戦略に深くかかわる「人的資本とバックオフィスの強化」について見てみることにしょう。

「当社はIT会社ではあるものの、比較的紙の運用が多かった。特に受発注業務や管理系のところでのオペレーションに紙での運用が集中していました。バックオフィスでのデジタル化、IT化が十分できていなかったので、こうした課題をまず解決しようと考えたわけです」(太田氏)

ペーパーレス化の遅れの問題は社内だけではない。

「当社は事業部制をとっているのですが、各事業部に営業担当者がいる。調達の窓口となる営業部というものがないのです。これが協力会社とのペーパーレス化の大きな阻害要因となっていました。そこで社内DX担当が各事業部にいる営業担当者の要望を取りまとめて横串を刺しました」(太田氏)

その役割を担ったのが経営企画部情報システムグループ(14人)だ。ペーパーレス化案件では社長に提案して了承を受けた上で、情報システムグループが担当、事業部とのパイプ役として法的問題や社内規定などを社内の関係部署と連携しながら確認し、システム開発を進めた。

DX戦略を推進するために、「社内向けのペーパーレス化」と「ビジネスパートナー(協力会社)向けのペーパーレス化」の2つのテーマを基本方針として定め、業務効率化・組織拡大に向け、デジタル技術を用いた様々な施策を講じている。

ではどのような取り組みが行われているのだろうか。「社内向けのペーパーレス化」ではワークフローシステムの開発・導入が行われた。開発は2020年10月からスタート。開始時期は2021年6月からだ。

ワークフローシステムとは、各種申請や稟議をはじめ、組織内で行われているあらゆる業務手続きを電子化する仕組み・ソフトウェアのことで、「稟議システム」や「電子決裁システム」とも呼ばれている。

「ワークフローシステムを自社内で開発したことで、従来紙でおこなっていた仕事を電子化しました。現在在宅勤務というのを社内で導入していますので、出社しなくても業務が回る仕組みを構築したというわけです」(太田氏)

内製化したのはシステムリサーチがSier(エスアイヤー)であり、内製の方が案件変更も柔軟に対応できるからだ。さらにセキュリティ面でも安全性を担保できる。

ワークフローシステムで対応したのは、「育児関連書類」「介護関連書類」「経費支払依頼書」などの総務・経理関係の各種申請書類だ。このほかには「無線LAN使用許可依頼」「USB/スマートデバイス利用許可申請」「ファイアウォール設定変更依頼」「メール転送・中止申請」「セキュリティチェック報告書」などインフラ系・セキュリティ関連の申告書などもある。

ペーパーレス化の課題は社内の仕組みづくり

ペーパーレス化のシステム開発はそう難しいものではなかった。

しかし新しいシステムを開発することと、導入することは別だ。システムリサーチがSierだからといってそう簡単にはいかない。

「新しいシステムを導入するためには、それにあった社内の仕組みをまず作っていかなければなりません。そのためには社内規定を整備する必要があるわけです。適切な決裁権限者による承認を担保するために、どうするのか、運用周りの書類の保管や契約の締結状況がどうなっているのか、書類の数がたくさんあるので、その確認作業は非常に苦労しました」(太田氏)

さらに社内向けの申請様式は多種多様なものがあり、主管部門や決裁ルートも様式ごとにまちまちであり、様式の追加や変更があるたびに、社内システム開発部門がプログラム改修を行うのでは業務改善効果が薄れるため、それをすることなく汎用的に主管部門が様式の追加や決裁ルートの設定・変更を行えるような実装に苦労しました。

情報システムグループは、ウォーターフォール開発により、 “各主管部門が自分達でワークフローシステムを構築できる仕組み作り”を行った。

そして情報システムグループが作成したこの仕組みを使って、主管部門がワークフローシステムを完成させる。

主管部門が必要要件に合うように準備された仕組みに沿って必要項目を入力・設定したり、選んだりして設定を行う。

システムリサーチは2022年には5万6200枚、2023年には7万3800枚、計13万枚の紙を削減した。

取引先との連携の窓口「情報システムグループ」

ペーパーレス化は社内だけではない。協力会社417社に対しても、同社の仕組みを提供し、発注から検収・請求まで一貫したペーパーレスによる社内外のデータ連携を実現しようとしている。

「協力会社とは設計段階ではコミュニケーションはとっていません。総務や経理などの関係部署から話を聞いて、どのような契約書があり、どのような流れで処理をしているのかを分析して法的に問題はないのか、といって点などを中心に電子メール取引するにあたってのシステム開発を検討しました」(太田氏)

その後テストなどを繰り返し、情報システムグループが協力会社との窓口を務め、パイロットユーザーになった取引先とのやり取りを踏まえながら、開発が進められていった。

そこで問題点が発覚した場合は、すぐにストップした。協力会社の負担が最小限になるようにするためだ。

「電子印鑑を協力会社各社に用意してもらうのも難しいと思いましたので、署名返信する方を測定できる仕組みを導入し、その方から来た時だけ、そのシステムが受け付ける仕組みを構築しました」(太田氏)

さらにシステムリサーチが送ったものが途中で偽造されて、相手に届かないというケースも考えられる。そのため相手に届いたことを担保するために、電子文書が原本であることを証明するためのタイムスタンプ(電子印鑑)と証明書を送っている。

その後出来上がったシステムについては、協力会社に対して、操作方法などの動画を作ってそれを見てもらい、理解を促した。

結果として全協力会社417社中、329社にペーパーレスの仕組みを提供し、受発注から検収・請求までの一貫した社内外のデータ連携を実施している。

情報システムグループのシニアマネージャー、竹内健一氏は次のように語る。

「残りの新規協力会社を含む88社については、引き続き対応中です。一部、暗号化の問題で実施したくても実施できない取引先がありますから、課題解決に向けた検証も進めています」

ペーパーレス化の対応は、これまでの「社内向け、パートナー向け」の対応だけでなく、基本契約書や機密保持契約書など契約書関連の書類をはじめ、できるところから引き続き進めていくという。

BIツールを活用して管理会計資料の見える化

システムリサーチは社内のペーパーレス化を推進する一方で、社内の管理会計資料の見える化にも力を入れた。活用したのはMicrosoftが提供しているBI(ビジネスインテリジェンス)ツールPower BI。

BIツールとは、企業が持つさまざまなデータを分析・見える化して、経営や業務に役立てるソフトウェアのことで、PowerBIはAzure(アジュール)やOfficeとスムーズに連携することが可能だ。豊富なデータコネクタが用意されているため、PowerBIだけで他ツールのデータも見ることができるほか、ExcelやPDFといったファイル形式での出力も可能で、データの扱いやすさに強みがあり、グラフやレポートも視覚的に分かりやすいかたちで作成できる。しかも他のBIツールに比べてリーズナブルという点も魅力だ。

経営企画部経営企画グループのシニアマネージャー、熊田由紀氏は次のように語る。

「これまで社内で手作業で行っていた管理会計の資料作りを、PowerBIのデータ分析ツールを活用することで、自動的に作ることができるようになりました。これで資料を見たい人は見たい時に見ることができるほか、部門別、階層別、期間別の分析が自分でできるようになり、資料を作る手間が省けました」

対象となっている管理会計資料は①外注利益率②検収プロジェクト売上比率③要員数1人当たりの売上④売上外注比率⑤稼働人数1人当たりの売上・プロパー売上⑥利益率の6種類ある。

システムリサーチでは2023年4月から開発をスタートし、8月から順次活用を開始している。

管理会計資料のBIツールを活用した見える化は、2024年1月より手作業での作成を廃止し、完全BI化に移行した。

「これまで手作業で行っていた社内管理会計資料の作成をBIツールを導入しました。移行準備の段階では、手作業での作成と平行稼働させ、BIツールで作成した資料が精度的に問題ないことが確認でき次第、手作業を廃止し、業務効率化を図りました」(熊田氏)

手作業廃止による業務削減時間数は、年間で15時間となり、生産性向上に寄与している。また、現場においてもその可視化した経営データを用いた分析が可能になるため、現場のDX化も加速する。

ペーパーレス化やBIツールの導入以外にもシステムリサーチでは2023年10月から何も信頼しないことをベースにセキュリティーを考えるゼロトラストという取り組みを開始している。

企業のDX戦略についてConvergence Lab.の代表取締役社長、木村優志氏は次のように語る。

「DX化は単なるデジタル化ではなく、会社が抱える課題を解決するための手段です。ときには仕事のやり方そのものを大きく変えなければならず、これまでのプロセスと違う仕事のやり方を強いられる部署もでてきます。総論ではすべての部署が賛成していても、各論では反対する部署が出てくることはよくあることです。そのため通常DXを進めていくときにはトップダウンで進めていきます。しかしシステムリサーチの場合はボトムアップで進めていくことができたというのは、しっかりとした課題設定と意思統一ができていたのではないかと思います。よく、DX用のデジタルツールを導入すればDXをやったように思っている企業が少なくありませんが、デジタルツールはあくまでも手段であり、大切なのはその会社が抱えている課題をしっかりと解決できているのかということです。そこをしっかりと見据えてやっていく必要があると思います」



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